ねぇ・・・この声、届いていますか? ねぇ・・・この言葉は貴方に響いてますか? ・・・ごめんなさい、 貴方に、貴方に・・・どうしても伝えたい想いが・・・あるの。 私の・・・キュウセイシュサマ。 最後のヒトヒラ「ーーーっかはっ・・・・!」 血液がぽたぽたと流れ落ちる。 床を赤が満たしていく・・・けれど、その赤を流していたのは・・・・ 「―――・・・エン、様・・・」 ・・・カシロだった。 カシロは震えながら救世主、深焔に微笑みかける。 その声に深焔は握り締めた剣をゆっくりと彼女の体から引き抜いた。 更に多くの赤を流したカシロは、カクリと倒れこむ。 「カシ・・・ロ?」 深焔は頭が真っ白になり、パクパクとただ口を動かした。 玄冬はカシロに何故庇ったのかと問いただす。 その場に居た全員が、あまりに予想外の展開に動けないで居た。 ただ一人、桜色の髪をした彼女を除いては。 彼女はゆっくりと口をひらく。肺に走る痛みをこらえながら。 「・・・エン様・・・アタシは、貴方と同じだった・・・」 そう微笑むカシロに、深焔はハッとする。 「同じ・・・?」 カシロは愛しそうに空(くう)に手を伸ばした。 「――・・・アタシ、一番大切な人を・・・この手にかけたの」 その言葉に、深焔と玄冬は凍りついた。 大切な人を殺さねばならいという、同じ境遇に。 カシロはゆっくりと過去を語り出す。 彼女の彼は“悠”というなの青年だった。 優しく、誰からも好かれる優しい青年。 カシロは彼に一目ぼれをした。いつも目でおいかけて。 ずっとずっと何年も想い続けていた。 でも、悠は誰にでも優しかったから、自分の事など見ていないと思っていた。 しかし悠も、カシロのことを愛していた。 明るくて屈託が無くて、太陽みたいな微笑みにふれたいと。 ふたりは惹かれ合い、何時の頃からか付き合いだすようになった。 ひとときの柔らかで優しい穏やかな日常。 ずっとずっと続けばいいと思うほどの優しさ。温かさ。 だが。 運命は想いに残酷だった。 『吸血病』 悠は人の血を吸うことに快楽を得る病気に犯されてしまう。 友人を殺し、家族を殺し・・・彼は大罪人としてさばかれることとなった。 しかしカシロは悠に共に逃げることを決意する。 こっそり彩の城の牢から彼を連れ出した。 逃げて・逃げて・逃げて・・・ 森の奥の奥・・・人気の無いところまでたどり着く。 「はぁッはぁっ、はぁ・・・ここまで来れば大丈夫だよね!」 カシロはほっとして微笑んだ。 しかし彼、悠は対照的に沈んだ顔で沈黙している。 それに気づいたカシロは覗き込んで声をかける。 すると彼の口から出てきた言葉は、悲しい・・・コエ。 「――やっぱり、ムリだよ。」 「・・・な、何言ってるの?」 カシロは分かっていても、否定したくて無理に微笑んでみせる。 しかし悠は悶え苦しみながら言葉を紡いだ。 カシロに対してすら、もう、理性を保てそうもないことを、告げた。 「嫌ッ!!」 ・・・悠が明確な答えを言う前に、カシロは耳をふさいで崩れ去る。 彼女は、彼のいう言葉が分かっていた。 悠はそんなカシロの心のコエに痛くて壊れそうになりながらも、懸命に言葉を紡いだ。
「カシロ!!!・・・聞いて、カシロ・・・。ボクだって死にたいわけじゃない。 もっと・・・もっと君といたかった。こうして触れ合っていたかった。 でも、その願いは叶わないって・・・判ってる。 ―――・・・だからせめて・・・・――― ・・・君の手で終わらせてくれないか、カシロ。 ――・・・ボクの、最後の我侭、聞いてくれる?」 柔らかな、言葉。 優しすぎる彼の・・・最初で最後のわがままだった。 カシロは泣きながら頷いた。 「・・・そしてアタシは、悠の願いをきいて・・・彼を殺した・・・っ・・・っげほっごほっ!!」 過去を話し終わると同時に、彼女は堪えていた血液を吐いた。 深焔は泣きそうな声でカシロの名を呼んだ。 そんな深焔にカシロは悲しい顔をさせまいと笑顔でいる。 カシロは彼を殺して、目の前がまっくらになってしまったことを、伝えた。 ・・・そして。 「私の、名前・・・ね、白い花ってかいて・・・『花白(カシロ)』って読むの・・・」 最後の言葉を、紡いだ。 「だから・・・ね、アタシが死んだら、白い花を添えてくれる?くろっちと春を迎えたら・・・ 散ると雪のような・・・桜を。」 「カシ・・・ロォ・・・ッ」「ッ!死ぬなんて、言うな・・・・!」 「・・・エン様・・・どうか・・・エン様のこの先がずっと笑顔で溢れます・・・よう、に・・・」 <後編ニ続ク>